映画レビュー
金曜日の夜と同じくらい、僕はこの映画が好きだ。
ビターチョコレートみたいに濃厚な映像。
艶っぽい車のボンネット。
艶っぽい銃身。
艶っぽい万年筆の先。
手触りがある映像美。
すべてのアングルに無駄がなく、ぎりぎりまでそぎ落とした脚本は、ただ、ため息がもれるくらい完璧だ。
1929年、禁酒法時代のアメリカ東部のある街。アイルランド系、イタリア系マフィアのボスが暗黒街で激しく勢力を争っていた。
街を取り仕切るアイルランド系のボス、レオ。
レオのブレイン、トム。
2人が愛す娼婦のヴァーナ。
姉のヴァーナに守られて裏切りを重ねるチンピラでゲイのバーニー。
力は力をくらって、もっと大きな力になろうとする。
二つの力は互いに相手に喰らいつく。
登場人物は誰もが濃い。それこそひつこいけど、ビターチョコレートみたいに。
それぞれが誰かを思い、それ以上に自分の幸せを願い、嘘をつき相手をだまし、嘘をつかれて相手にだまされる。
銃撃戦が話題の映画だけど、それ以上に言葉の上に言葉とお互いの思惑を重ねる、絶妙なセリフまわしは映像と同じようにスタイリッシュで美しい。
自分のポリシーを握って、どれだけそれに引きずられてぼろぼろになっても、握って放さないことがトムにとってもっとも大切なことで、真実なのだ。
だからそれを放さないために彼は平気で嘘をつく。
一の位の足し算みたいにシンプルに。
トムはタイプライターでピリオドを打つみたいに、銃を撃つ。
物語にはピリオドが必要だ。
それがないとおかしなことになってしまう。
だけど、数が多すぎてもおかしい。
誰かと、何かに告げるために彼は引き金を引く。
そして彼の物語に終わりが来る。
ハードボイルドな生き方ってきっと、自分で自分にピリオドを打つことだ。
僕はこの映画を観て、そう思った。
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